門坂流へのオマージュⅡ 大場咲子

流 2018 エッチング ed15 86x86mm

【コメント】

門坂流先生とお会いしたのは、私が大学3年になる頃だった。紹介された福生市にある居酒屋に行き、門坂先生、多賀先生、建石先生、木村先生と一緒に乾杯した。私はまだ美術業界の右も左もわからぬ学生だったので、この方々とお会いできたのは幸運だったとしか思えない。
門坂先生はその作品を見るまでは「とても気さくで陽気なおじちゃん」という印象を受けた。
4人の天才達は「おじび」と称された美術家登山部の話題で盛り上がり、門坂先生は輪の中でいつも少年のように笑っていた。その笑顔を見ると門坂先生を嫌いになれる人はこの世にいないだろうと思うぐらい無邪気で天真爛漫としていた。
だから、初めて門坂先生の作品を目にした時、お人柄とのギャップに驚かされたのだ。
美しい構図、空気を掴むように緩やかに流れる曲線美。
きっとこの方の中には「画業の鬼」がいるに違いない。一切の妥協を許さない作品からは、門坂先生が誰も手の届かない場所へ一人猛然と進んでいく姿が浮かんだ。
自然と私の目から涙が出たのも若かったからかもしれない。とにかく良い刺激を沢山いただいた。
私は、今回の展示のためにビュランを買った。今まで使った事がなかったので、その扱いにくさに驚いた。真っ直ぐ引きたいのに、力を込めれば彫り進まず、力を抜けば思わぬ方向に曲がっていく。改めて、凄すぎるよ、先生。と感嘆した。
これは練習が必要でとても間に合いそうになかったので、今回はビュランを使わずに私が受けた門坂流先生の印象を形にして出品した。作家活動のお守りとして自分の部屋にも飾ろうかと思っている。
私の作品を知る門坂先生が見たら拍子抜けするかもしれないが、笑ってくれる事を祈っている。

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