「本の芸術」 ~武井武雄の「刊本作品」を知って~

[ 2014年3月13日 ]

2014年3月17日(月)~4月5日(土)
会場: 不忍画廊 小展示室
休廊日: 日曜・祝日
営業時間: 11:00~18:30
同時開催: hundreds of faces -100faces & friends- 作田富幸 個展

◎出品作家
伊藤亜矢美 設楽知昭 鈴木敦子 つちやゆみ 釣谷幸輝 橋場信夫
藤田夢香 安元亮祐 山中現
◎特別出品
「武井武雄 刊本作品コレクション」(土屋禮一氏所蔵)

 

「刊本作品」というのを知っていますか?

『キンダーブック』 『コドモノクニ』等で活躍した武井武雄(1894~1983)が、絵画・彫刻・工芸など美術のジャンルに〝本という形式と素材によって表現する美術を加えたい〟と、抜群のセンスと類まれなプロデュース能力を発揮し、約50年の間に139冊制作した「本の芸術作品」に付けた呼称です。世界レヴェルの芸術作品である武井武雄の刊本について、もっと多くの美術ファンに知ってもらうべく掌企画を思いつきました。9人の現代作家に「本の芸術」というお題で新作を依頼、不忍画廊の真向かいで開催される「武井武雄の世界展」と同時期に展示いたします。併せてご高覧いただければ幸いです。

★「刊本作品」はイルフ童画館(武井武雄の美術館)で常設展示しています
【美術館所在地】長野県岡谷市中央町2-2-1 0266-24-3319

★「生誕120年 武井武雄の世界展」
【会期】3/26~4/6
【会場】日本橋高島屋8F
【主催】岡谷市、NHKサービスセンター、日本経済新聞社
童画・刊本・陶芸など約400点出品

 

出品作家、出品作品紹介

「本の芸術」 ~武井武雄の「刊本作品」を知って~ の出品作家9人の作品、略歴、コメントをご紹介します。
出品作品は画像をクリックすると詳細ページをご覧いただけます。
作家のコメントは下記の質問に答えたものです。

Q1.武井武雄の世界を知って、どんな事に興味を持ちましたか?
Q2.(あなたにとって)「本」という表現形態は、どのようなものですか?

 

伊藤亜矢美

A1. こだわりを楽しんでいることです。作品を見ていたら、全ての工程への強いこだわりが伝わってきて、うっとりしました。その中でも刊本は、こだわりの集大成で「触りたい」「そばに置いておきたい」と思いました。

A2. 1つのテーマがどんな風に展開していくかと、わくわくしながらページをめくる楽しさを味わえる表現だと思います。今回は「くつろぐ」をテーマに、ページをめくるたびにプッと笑ったり、ホッとしてもらえたらいいなと思ってつくりました。

1980~ 大阪生まれ 大阪府在住
大阪芸術大学美術学科卒。木版画家、ミクストメディアでも制作。おにぎりや動物などをモティーフに、観客が「ホッと」するような温かみのある作品を制作している。第3回イルフビエンナーレ日本童画大賞展《審査員特別賞》、第15回川上澄生美術館木版画大賞展《準大賞》。ボローニャ国際絵本原画展《入選》(板橋区立美術館他)。 個展:番画廊(大阪)、不忍画廊他

 

設楽知昭

A1.イルフ童画館にまだ行ったことがないので、是非、近いうちに訪れてみようと思っています。

A2. 日々の制作ノートが「本」というものになったとしたら、時間というもののない、順番というものを特に必要としない、どこからでも観ることのできる「本」となるのかもしれません。その意味で私のノートブックは「絵画」と言えるかもしれません。

1955~ 北海道生まれ 愛知県在住
愛知県立芸術大学卒(現在同大学教授)。美術家。1995 名古屋市芸術創造賞(名古屋市文化振興事業団)、「POSITION1994」(名古屋市美術館)、「VOCA展」(上野の森美術館)、1996「北海道・今日の美術 語る身体・10人のアプローチ」北海道立近代美術館他出品。個展:白土舎(名古屋)、スタンディングパイン(名古屋)、不忍画廊(2014年5月予定)

 

鈴木敦子

A1. 仕事としてではなく、楽しむ為だけに本を制作していた、という事。

2. 手のひらの中で静かに会話のできる世界

愛知県生まれ 千葉県在住
名古屋芸大美術学科絵画科卒。木版画家。日常にある身近な風景・情景を、十数版もの色版を重ねた繊細な作品を制作、清宮質文を敬愛し創作版画の正統な流れを汲む。川上澄生美術館木版画大賞展《準大賞》 詩画集『午後の光 詩:垣内磯子』(パロル舎) 「鈴木敦子・岩佐徹二人展~清宮質文様へ」(須坂市版画美術館) 「金子みすゞの世界を詠う 木版画の詩人 鈴木敦子展」(瀬戸内市立美術館)

 

つちやゆみ

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

A1. 伝統の職人技に武井武雄の感性が加わると、それはそれは美しいページが手のひらの上でゆっくりと展開してゆきます。
素材にぴったりの物語にも感心しきり、こだわりの大人の遊び心を多いに学べる本として何度も手に取りたくなります。

A2. 本の形態には、手触り、ページをめくる音、読み手にあった時の流れ、などが兼ね備えられていて、作り手として、ページをめくるリズムに乗り、考え方や美的表現を形にしていく高揚感があると思います。それに、後書きはもちろんのこと、表紙、見返し、扉、帯、などといった部分にも表現できる場所があり出来上がったときは達成感が得られます。満足感はというと自分自身の志次第ですから、納得がいくまで繰り返すしかありません。

東京在住
武蔵野美術大学日本画科卒。東京展絵本の部屋で「きつねのおんせん」が《東京展大賞》受賞。手作り絵本を自己表現の場として創作絵本、造形作品などを発表している。

 

釣谷幸輝

 

 

 

 

 

 

A1. 「版画」と「本」の深い深い関わり。

A2. 「版画」にとってなくてはならない大切な友人。

1967~ 東京都生まれ 富山県在住
金沢美術工芸大学院修了。銅版画家。油絵を描いていた学生時代から、より制約の多い技法「銅版画」に興味を持ち、アパートの台所を工房代わりに幾多の失敗を重ねながらほぼ独学で修得。卒業後、周囲から反対されながらも版画家として作家活動を始め、現在に至る。ボローニャ国際絵本原画展、浜松市美術館版画大賞展《新浜松市誕生記念賞》受賞、インターアート・スモールグラフィックスビエンナーレ展《1st Prize》など受賞歴多数。

 

橋場信夫

 

 

 

 

 

 

A1. 創作に対する飽くなき追求

A2. 秘められた快楽

1950~ 東京都生まれ  東京都在住
エコール デ ボザール ヤンケルに学ぶ(パリ)。美術家。川瀬敏郎とのコラボレーションなど現代美術による「室礼(しつらい)」の第一人者。コレクション:印刷美術館、慶応義塾大学、センチュリーハイアット東京、和久傳、富美代(京都)、あさば(修善寺)、石葉(湯河原)、蓬莱(伊豆山)、水明館(下呂)、トヨタ自動車(豊田)、ザ ペニンシュラ東京、ザ ウインザーホテル洞爺湖、ANAインターコンチネンタルホテル東京、羽田空港新国際線ターミナルVIPルーム。2013.12月から本の装幀を3冊手がけ、一冊はフランスでの出版。2014.4月、アメリカンクラブでの「黒田泰蔵展」壁面展示を予定。2014年11月個展(赤羽橋t-gallery)予定。

 

藤田夢香

A1. 武井武雄と聞くとどうしても神保町の古本屋さんでアルバイトしていた頃と結びつく。
もちろん、その頃に出会ったのだから当たり前ではあるけれど、なんだか暗闇の中でぼうっと光が灯るような気分になる。ページをめくると、どこか懐かしいような昔から知っているような世界を示してくれる普遍性。
特に「刊本作品」は、「本」という「型」の中で、そのものの世界感を無限に広げてくれた。
目で見て楽しむだけでなく、物語りの世界、ページをめくるという動作、紙の質感、にほい…本を開いている間だけは、たったひとりの為だけに存在しているという贅沢。
まさに、「芸術」というそのものの奥深さの扉を開いてくれたことにつきる。
今もなお、その扉の鍵がたくさん存在していることに感嘆しながら鍵探しのできる喜びを噛みしめている。

A2. おそろしいほど、無限の世界。
平面や立体の世界とまた違って、扉を開いて初めて中へ入り込めるという密やかさやページをめくるという行為の中に手に取った人の呼吸が感じられるようで、制作している時から常に手にする人の事が離れない…不思議な感覚。
「シルクスクリーン」という商業印刷にも近い媒体を使って作品を創ってきたので、「本」や「印刷」という技術的な部分には常に意識下にあり、その奥深さや面白さに触れてきたがゆえ、怖くてなかなか手を出せない世界…でしょうか?
ただ、今回は「本」や「物語」そのものがあっての「装幀」という世界とは違い「本」という概念そのものから捉える遊びをしてみました。
だれもが知っている「本」という型を借りるからこそできること。恥ずかしい気分になってしまいますが、武井武雄が果敢に試みたように「どんな面白いものができるか?」を考えて「視点をちょこっとかえる」ことができる「本の芸術」の扉のノブに手をかけようとしました…(まだ、開けていませんよ!)

1976~ 東京都生まれ 東京都在住
美学校卒。美術家。モノタイプ(1点のみ印刷された版画)、アクリルレジンによる立体作品、LEDを使用した作品など様々な手法で“言葉に出来ない詩”を表現している。南フランスCAGNES・SUR・MERにて「JAPAN VISIONS CONTEMPORAINES」展参加、「FIELD OF NOW 2002 彩色健美」出品、「The Allure of Contemporary Japanese Prints」(ワシントンD.C.)、個展:不忍画廊ほか。

 

安元亮祐

 

 

 

 

 

 

A1. 武井武雄氏の中にある創造力、好奇心、遊び心、すべて色彩の形になって芸術性を生み出したのだと思う。

A2. 触れてめくれる紙のオブジェ、親しみと優しさが実感出来る楽しみがある。

1954~ 兵庫県生まれ 茨城県在住
筑波大学付属聾学校美術専攻科卒。美術家。松本竣介の作品に感動し画家としての道を歩む。《昭和会賞》受賞、安田火災美術財団奨励賞展《新作秀作賞》、セントラル美術館油絵大賞展《佳作賞》他受賞。個展:不忍画廊、日動画廊、画廊香月(福岡)、アサヒギャラリー(山梨)他。詩画集『風の神話』(詩:松永伍一、画:安元亮祐)。2014年、汐留・パークホテル東京にて2つプロジェクト予定《3月、アーティスト・イン・ホテル》、《企画「冬の動物園」出品(仮称)》

 

山中現

A1.2. 武井武雄のなつかしい絵、そしてそのすぐれた刊本作品の仕事を見て、僕は僕なりの「本」をめざしたのだけれど、完成には至りませんでした。それにしてもこの制作を通じて、版画は、やはり手にとって見るもの、という思いを強くしました。

1954~ 福島県生まれ 埼玉県在住
東京芸術大学美術学部油画科卒。木版画家・画家。「西武美術館版画大賞展」受賞後、国内で一番個展の多い人気作家となり、国際版画展での受賞や美術館企画展出品も多数、2011年福島県立美術館で開催された「山中現個展」は木版画、油彩、モノタイプの代表作が集められた大回顧展となった。個展:シロタ画廊、77ギャラリー、不忍画廊(駒井哲郎との二人展2014.7月予定)

 

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