日本現代銅版画史展  名作を繋ぐポエジーの変遷 駒井哲郎|池田満寿夫|北川健次を中心に
小展示室にて| 池田俊彦Selection 初期作から新作まで


左:池田満寿夫「アダムとイヴ(捕らえられたイヴ)」1964年 中央:駒井哲郎「風」1958年  右:北川健次「楕円形の肖像」1979年

会期:2018.8/22(土)~9/8(土) 日曜休廊 11:00-18:30

銅版画芸術のパイオニアとしてデューラーの代表作「メランコリア/1514年」「騎士と死と悪魔/1513年」等が発表されて500年が経ちました。
日本では1950年代~60年代にかけて、駒井哲郎、池田満寿夫、浜田知明等が世界レヴェルの国際版画展で受賞を重ね活躍、多くの若いアーティストに多大な影響を与えてきました。そうした先達から影響を受け、そのエスプリを現在も受け継ぐ北川健次氏に今企画展の監修協力を依頼、《近代~現代》を繋ぐキーワードとしてテキスト「版画に刻まれるポエジー」もご寄稿頂きました。
駒井哲郎、池田満寿夫、北川健次を中心に、浜田知明、加納光於、浜口陽三、菅野陽(銅版画家・「日本銅版画の研究」著者)の名作・秀作銅版画を出品します。デューラーから500年、エスプリの効いたポエジーとしての銅版画芸術を是非ご堪能ください。


北川健次「廻廊にて- Boy with a goose」2007年

版画に刻まれるポエジー

一九八二年に東京都美術館の企画で『日本銅版画史展』という展覧会が開催された事があった。四世紀にわたる日本の銅版画の歴史を近世・近代・現代の時代区分によって体系的に観せる事を目的としたものである。その図録を開くと、キリシタン銅版画から始まり、司馬江漢・岸田劉生・国吉康雄・藤田嗣治・長谷川潔・駒井哲郎・浜田知明・池田満寿夫・加納光於…と云った名が続き、最後は私の作品で終わっている。この展覧会が開催された時、私は三十歳であったが、版画史という通史的な概念を表現者として強く意識しはじめた節目となる展覧会であった。私はその後、幸運にもこの展覧会に出品していた主要な先達の版画家たちと親しく関わっていくのであるが、その交わりの中から私が吸収した主たるものはエスプリであり、また作品が作品たりえるためのフォルムの問題であった。そして何より、銅版画という方法の檻にのみ捕獲可能なポエジー(詩)と、そのリアリティーについて想いを巡らすようになっていった。
「超絶的美感を起こさせることが詩の仕事である。また小説も絵画彫刻も同様にそうした詩の創作を仕事として初めて芸術になり得るものであろう。」と詩人の西脇順三郎は語っているが、その意味でのポエジーの息づく領土を、私は銅版画の中に探っていたのである。銅版画における詩的表現の可能性を見ると、例えば駒井哲郎と池田満寿夫はその資質、その作品において全く異なるタイプの版画家であったが、先ず何よりもその本質は紛れもなく詩人であり、硬質な銅板に各々の馥郁たるポエジーを刻む人であった。
…ではそのポエジーとは何か。それはイメージの新しい関係を連結し結合して永遠性、そして超絶的な美感へと私たちを至らしめる「何ものか」であって、その先は言葉ではなく感覚でのみ通じ合う、芸術の本質に息づく核とも云えるものであろう。現代は最も芸術の深部から遠去かって久しい不毛の時代であるが、この時にこそ、「ポエジーとは何か」という問いかけの放射を孕んだ本展のような展覧会は確かな意味を持ってくるのではないかと私は思っている

北川健次

CCGA現代グラフィックアートセンターにて、「北川健次:黒の装置―記憶のディスタンス」を開催中です!

会場:CCGA現代グラフィックアートセンター(福島県須賀川市)
会期日時:2018年06月16日(土)~09月09日(日) 10:00‐17:00(入場は16:45まで)
休館日:月曜日(7月16日を除く)、7月17日(火)
入館料:一般300円/学生200円/小学生以下と65才以上、および障害者手帳をお持ちの方は無料

ART BOOK
《新刊》『危うさの角度 北川健次作品集』2018.8月中旬 求龍堂刊 3700円+税

会期中限定販売 『北川健次資料セット』 2000円+税
LIMITED GRAPHIC WORCS 「PERSONA IN VENEZIA」(エンボスサイン入り)、
リーフレット(text :久世光彦、北川健次)、小冊子(ヴォルス+フォートリエ論)ミニポスター、ポストカード5枚 他(限定10セット)

『版画家・池田満寿夫の世界 ※レゾネ』
2002日本経済新聞社刊 3900円+税

『MASUO EROTICA』
2002不忍画廊刊 1000円+税

『Artist Booklet Vol.7 池田満寿夫/舞踏・ダンス・身体について』
2017不忍画廊刊 500円+税

『銅版画師・菅野陽遺作展』図録
2000不忍画廊刊 1000円+税

同時開催:小展示室にて| 池田俊彦Selection  初期作から新作まで


池田俊彦 「the forth newhuman 赤いヴェルヴェット」 2018 リトグラフ ed30

昨年の個展で500年前のデューラー銅版画作品に思いを馳せた銅版画家・池田俊彦。縁あって400年以上前に日本で初めて銅版画が制作された長崎県南島原市に移住しました。同時開催「日本現代銅版画史展―名作におけるポエジーの変遷」と併せてご高覧下さい。
「人々の思考がもつ質量がどこへいくのか、僕はその行方に興味があります。
今から約400年前、日本人の手による初めての銅版画が現在の長崎県南島原市で作られました。その束の間の文化は、禁教令という大きな力によって歴史からも人々の記憶からも完全に消し去られてしまいました。 しかしそこで制作された銅版画達にはきっと、その名も無き作者達の膨大な願いや祈りの質量が内包されていたはずです。この度の南島原への移住でその小さな断片にでも触れられればと願っています。」

池田俊彦