銅版画 礼讃

「幻想のフラヌール – 版画家たちの夢・現・幻」
(町田市立国際版画美術館)
…なんて素敵なタイトルなのでしょう。展覧会初日に観覧してまいりました。確かな作家・作品の選定と魅力的な展示構成、企画協力・相馬俊樹氏によるテキストも素晴らしく、一度ならず二度、三度と足を運んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このたび不忍画廊では、美しい版画の魔術で私達を魅了した「幻想のフラヌール」展に感銘を受け、感謝とリスペクトを込めた “特別企画展” を6日間だけ緊急開催いたします。同展でも紹介された 渡辺千尋(1944~2009)・門坂流(1948~2014)・池田俊彦(1980~)と、初めての銅版画技法書の著者であり版画研究者としても著名な 菅野陽(1919~1995)を中心に、日本の現代版画を世界レベルにした駒井哲郎(1920~1976)と 池田満寿夫(1934~1997)や、現在活躍中のアーティストの秀作まで、選りすぐりの銅版画のみを紹介する特別企画展です。

出展作品

渡辺千尋
《笑う男》

1978 ビュラン 15.5×12cm ed. 60

渡辺 千尋|Chihiro Watanabe(1944 – 2009)
1944年東京都杉並区生れ、1954年長崎市へ転居。“東京生れ長崎育ち” と公言する。舞台照明、装置デザインの仕事を経て、グラフィックデザインをてがける一方、油彩・水彩・エナメル・アクリル・色鉛筆・ペンなど様々な技法で絵画作品を発表。

門坂 流
《夏雲》
「幻想のフラヌール – 版画家たちの夢・現・幻」(2024年 町田市立国際版画美術館)

1990 エングレービング 18.8×28.7cm ed. 75

門坂 流|Ryu Kadosaka(1948 – 2014)
1968年東京芸術大学油絵科入学。鉛筆・ペン画での創作活動を行い、主に書籍装幀や挿絵などグラフィックの仕事でドローイング作品を発表。1985年頃から銅版画による線の表現に惹かれエングレーヴィングの技法を研究。2014年4月永眠。


池田俊彦
翁-Q 心地良い水玉

2009 エッチング 60.5×60.5cm ed. 10

池田 俊彦|Toshihiko Ikeda(1980 – )
1980年東京都八王子市生まれ。2003年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業(≪福沢一郎記念賞≫受賞)、2005年東京藝術大学大学院美術研究科(版画研究室)修了。2013年に文化庁の海外研修生として一年間ロンドンに滞在。現在、長崎県南島原市在住。

菅野 陽
《おしゃべり》

1959 銅版画 35,4×23,7cm
平塚市美術館、茅ヶ崎市美術館 所蔵

菅野 陽|Yo Sugano(1919 – 1995)
1919年1月17日台湾台北生まれ。銅版画のさまざまな技法(特に腐食技法)を駆使した作風で知られる。国内で初めての銅版画の技法書の著者であり、また初期洋風版画を研究し、83年「江戸の銅版画」を刊行するなど銅版画の研究者として著名である


駒井哲郎
《人形と小動物》

1951 アクアチント 18×10.4cm ed. 25 カタログレゾネ No. 41

駒井 哲郎|Tetsuro Komai(1920 – 1976)
1920年、日本橋生まれ、西田武雄主宰の日本エッチング研究所で銅版画を学ぶ。慶応義塾普通部卒、東京美術学校入学。<春陽会賞>、サンパウロ・ビエンナーレ展<コロニー賞>、ルガノ「白と黒」国際版画展<国際次賞>ほか多数受賞。1976永眠。

池田満寿夫
《デューラーの恋人》

1971 メゾチント、エッチング 36×34cm ed. EP

池田 満寿夫|Masuo Ikeda(1934 – 1997)
国際的な版画家、画家、彫刻家、陶芸家、芥川賞作家、エッセイスト、浮世絵研究家、脚本家、映画監督など多彩な顔をもつマルチ・アーチスト。1934年、旧満州国・奉天市で生まれ、終戦後に父母と共に長野に引き揚げる。長野県立長野北高等学校(現長野高等学校)在学中に現不忍画廊会長・荒井一章と級友となり、以後「作家と画廊」という関係を超え晩年まで友人関係を続けていく。

「幻想のフラヌール – 版画家たちの夢・現・幻」(町田市立国際版画美術館 2024.6.1~9.1)

企画協力に美術評論家の相馬俊樹氏をむかえ、幻想の力によって〈アナムネシス(記憶回復)〉を喚起する作品を、町田市立国際版画美術館収蔵品から紹介する展覧会。門坂流、多賀新、池田俊彦、渡辺千尋 ほか。

〈幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻〉

展覧会情報

〈銅版画 礼讃〉

  • 会場:不忍画廊 (〒103-0027 東京都中央区日本橋3-8-6 第2中央ビル4F)
  • 会期:2024年8月31日[土] - 9月7日[土]
  • 開廊時間:12:00 ~ 18:00
  • 休廊日:月曜・火曜(9/2[月], 3[火])

会場写真

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