




「芸術家たちが紡ぎだし、いにしえより積みあげていった数多の幻想は、複雑に重なり合い互いを刺激し合いながら共存し、とどまることを知らずに蠢いて、とわに変容し続けるだろう。
そして、それらはわれわれの膠着した日常を揺さぶりつつ、現実を改変し続けていくだろう。」
Web企画〈幻想の幻想のパランプセスト ~架空の美術庭園~〉
2024年11月 相馬俊樹(美術評論家)
vol. 1 亀井 三千代|Michiyo Kamei
画家
2007 岩絵の具、膠、洋紙 50.5×50.5cm ¥110,000
解剖幻想
とでも称すべき独創的な着想
外の世界に解き放たれて生々しく息づく臓器の断片は、肉の感触を纏う花々として燃えさかり、麗しき肉色華へと変容─結晶化する…
医療現場で人体解剖図を描き続けた亀井三千代は解剖画と植物画との婚姻を夢み、やがて、解剖画と春画とを融合させる独創的な着想を育んでいった。
画紙─表層に晒された臓腑は未開の肉体の野生を存分に表明し、生々しく息づいているが、それらのイメージに自然の生気に満ちた草花のイメージが二重写しされ、解剖画と植物画は見事に婚礼を遂げる。

⦅rose⦆
2009 墨、岩絵の具、膠、和紙 53×45.5cm SOLD
男と女は解剖学的な次元で、深き内より貪るがごとくまぐわう。
肉の断片と剥きだしにされた骨片はごったがえし、ある種の磁場により渦を巻きながら混淆する。
闇黒の領域から流れ込むカオティックな力が、エロスの領土を蹂躙し、掻き乱していく。
死の影が性の戯れに狂い舞う男と女を繰り返し駆り立て、自他の境界が朧げになるまで煽り立てて、ついには彼ら自身が消失する彼方を照らしだす。
Artist
亀井 三千代|Michiyo Kamei
1966年東京生まれ。幼少期を京都で過し、独学で絵を描く。1996年より東京医科歯科大学(現:東京科学大学)・医学部解剖学講座にて聴講を始め、人体解剖図、医学論文用イラストを多数作成する。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。
Art critic
相馬 俊樹|Toshiki Soma
1965年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒。美術評論家。
主な著書:『エロティック・アートと秘教主義』(2018年、エディシオン・トレヴィル)、『アナムネシスの光芒ヘ』(2016年、芸術新聞社)、『禁断異系の美術館』シリーズ1~3(2009~2010年、アトリエサード)、『エロス・エゾデリック』(2011年、アトリエサード)、『テリブル・ダークネス』(2013年、アトリエサード)、『魔淫の迷宮 日本のエロティック・アート作家たち』(2012年、ポット出版)
編著:「風俗資料館 資料選集」シリーズ=『秋吉巒 挿画集 夢幻の悦楽郷』(2024年、アトリエサード)『伊藤晴雨の世界2 伊藤晴雨 秘蔵画集~門外不出の責め絵とドローイング』(2024年、アトリエサード)/『伊藤晴雨の世界1 [秘蔵写真集]責めの美学の研究』(2023年、アトリエサード)
共著書:『病と芸術』(2022年、東信堂、ロメーン・ブルックス論を収録)、『異界の論理』(2011年、アトリエサード、飯沢耕太郎氏との対談集)
訳書:ピーター・ウェブ『死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール』(2021年、国書刊行会)


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