幻想のパランプセスト ~架空の美術庭園~ vol. 10 大島哲以

vol. 10 大島哲以|Oshima Tetsui

花の遍歴(自画像のある風景)

1980年代 日本画(混合技法) 72.7×116.7cm(M50号) 額付 ¥1,650,000


 もとは鬼や動物などを描く民画風の日本画家であった大島哲以は、1970年代初頭に文化庁の海外研修でウィーンに赴き、その地でオーストリアの画家エルンスト・フックスの創始した美術グループ、ウィーン幻想派に接し、主要メンバーの一人であるヴォルフガング・フッターに学んで、師から混合技法を伝授された。そして、帰国後は日本を代表する独特の幻想画家となり、幻想表現を志す後進の画家たちにも影響を及ぼしたのであった。

変身の時

1970年代作 日本画(混合技法)
33.3×24.2cm(F4号) 共シール 額付
¥176,000

野の花

1969 日本画(混合技法) 31.8×41cm(F6号)
SOLD

蒼玉

日本画(混合技法) 116.7×72.7cm(M50号)
額付 ¥1,650,000

かなしみ

1960年代作 日本画(混合技法)
45×53cm(F10号) ¥330,000

 大島の代表作は、その身を薔薇の邪霊に侵され、責め苛まれる、官能的で、ときに悲哀を漂わせる異形の女性像である。彼女らは責苦の果てに悦楽の泉に溺れ、寂寞とした人間存在の極地にむしろ安らぎを見いだす。大島の描く幻想においてはこのように、しはしば惨たらしき混沌が官能を刺激し、しだいに安逸へと変容していくかのようなのである。

《薔薇刑(女)》

1986 銅版画(エッチング、アクアチント)
15×10.5cm ed. 30
シート ¥33,000(額付 ¥44,000)

「愛と幻想の女たち」サロメ

1981 銅版画(カラーメゾチント、手彩)
22×15cm ed. 60
シート ¥44,000(額付 ¥55,000)

緋色

日本画(混合技法) 116.7×72.7cm(M50号)
共シール 額付 ¥1,650,000

 大島哲以は今でこそ知る人ぞ知る幻想画家であるが、彼よりやや年長で、シュルレアリスムの影響からやはり特異な幻想表現を試み、珠玉作を積み重ねていった秋吉巒(1922–1981)や藤野一友(1928–1980)とともに、今一度顧みられるべき、そして再評価を受けてしかるべき存在なのではなかろうか。このウェブ企画がその扉を開く一端となれるのなら、選者としては幸甚である。

《薔薇刑 -自画像-》

1986 銅版画(エッチング、アクアチント)
14.5×10cm ed. 30
シート ¥33,000(額付 ¥44,000)

《薔薇の女》

1985 アクリル画
14.5×9.5cm
額付 ¥110,000

女の嫉妬

日本画(混合技法) 91×72.7cm(F30号) 共シール 額付 ¥880,000


Artist

1926年、愛知県名古屋市生まれ。1999年に鎌倉で永眠。大阪で日本画家・中村貞以に師事し、院展に出品。1971年 第1回山種美術館賞展。1971-72年には文化庁在外研修でウィーンに滞在する。
「現代の幻想絵画展」(‘72新宿小田急)、毎日新聞社主催「大島哲以展」(’73日本橋三越)、「从展」(’76~‘80東京都美術館)、「日本美術の展望-日本画展」(’81富山県立近代美術館)、「幻視者たち」(‘82ヴェルツブルグ美術館、’83伊勢丹美術館)、「日本の裸婦展」(‘88埼玉県立近代美術館)、「20世紀絵画の展開」(’88名古屋市美術館)、羽黒洞・不忍画廊共催 「薔薇刑-大島哲以の世界展」(‘95アートミュージアム・ギンザ)など、生前は個展や美術館の展示に意欲的に取り組んだ。1999年に逝去。 「追悼・大島哲以遺作展~未発表のミニアチュール~」(‘99不忍画廊)
主な収蔵先:東京国立近代美術館、平塚市美術館、名古屋市美術館、刈谷市美術館、豊橋市美術博物館、池田20世紀美術館 他

Art critic

相馬 俊樹|Soma Toshiki

1965年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒。美術評論家。
主な著書:『エロティック・アートと秘教主義』(2018年、エディシオン・トレヴィル)、『アナムネシスの光芒へ—幻景綺論』(2016年、芸術新聞社)、『禁断異系の美術館』シリーズ1~3(2009~2010年、発行:アトリエサード/発売:書苑新社)、『魔淫の迷宮—日本のエロティック・アート作家たち』(2012年、ポット出版)ほか。
編著:「風俗資料館 資料選集」シリーズ=『伊藤晴雨の世界2 伊藤晴雨 秘蔵画集〜門外不出の責め絵とドローイング』(2024年)、『伊藤晴雨の世界1 [秘蔵写真集]責めの美学の研究』(2023年)/「風俗資料館 秘蔵画選集」シリーズ=『秘匿の残酷絵巻[増補新装版]〜臼井静洋・四馬孝・観世一則』(2023年)、『秋吉巒・四条綾 エロスと幻想のユートピア』(2011年)(すべて発行・アトリエサード)
共著書:『病と芸術』(2022年、東信堂、ロメーン・ブルックス論を収録)、『異界の論理』(2011年、アトリエサード、飯沢耕太郎氏との対談集)
訳書:ピーター・ウェブ、ロバート・ショート『死、欲望、人形: 評伝ハンス・ベルメール』(2021年、 国書刊行会)

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