




「芸術家たちが紡ぎだし、いにしえより積みあげていった数多の幻想は、複雑に重なり合い互いを刺激し合いながら共存し、とどまることを知らずに蠢いて、とわに変容し続けるだろう。
そして、それらはわれわれの膠着した日常を揺さぶりつつ、現実を改変し続けていくだろう。」
Web企画〈幻想のパランプセスト ~架空の美術庭園~〉
2024年11月 相馬俊樹(美術評論家)
vol. 9 山田 彩加|Yamada Ayaka

⦅混ざり合う細胞―Mixed cells⦆
2022 リトグラフ、手彩 70×52cm
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「命の繋がり」という明確なコンセプトのもとで意欲的な制作活動を展開する山田彩加は、《森羅万象に捧げる祈り―命の根源》などの代表的大作において、しばしば、ところどころに死の影をも忍ばせた、麗しくもダイナミックなヴァイタル・カオス(生きた混沌)とでも称すべき自然の様相を開示する。それは、いわば、静寂を装いつつも変容と融合を繰り返す微かな、しかるに力強い蠢動-震えであり、かつて筆者は、古代ギリシアはイオニア派の自然哲学者アナクシマンドロスが思案した、無限定かつ不定の根源物質アペイロンのごとき「生きた」自然を想起させる、と指摘したことがあった。

⦅森羅万象に捧げる祈り―命の根源⦆
2009 リトグラフ 73.5×93cm
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⦅幻想の光―版画集「幻想の光」より⦆
2021 リトグラフ 21.5×16cm
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アナクシマンドロスはソクラテス以前の思索者たちのひとりとされるが、マルティン・ハイデガーは彼らが育んだ、「自ずから成りいでてある」〈存在=生成〉としての「生きた」自然(ピュシス)概念の復権を提唱していたという。一方、プラトンからヘーゲルにいたる哲学者たちは「つくられてある」〈存在=被制作性〉としての自然概念を確立し、自然を創造のために利用される無機的な物質-材料(質料)にまで貶めたとされる。

⦅視線―inevitable fate⦆
2022 リトグラフ、手彩 13×24cm
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⦅幸せな結末―Happy Ending⦆
2022 リトグラフ、手彩 38×28cm
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⦅過去の残影 II―Remnants of the Past II⦆
2023 リトグラフ、手彩 42×34cm
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山田彩加の繊細な線の舞踏はそのような「死んだ」自然観を刷り込まれたわれわれの目に、自力で生成する「生きた」自然、すなわち命の本性の記憶を甦らせてくれるのではなかろうか。

⦅樹々の鼓動・薄氷に溶ける霜の花―The heartbeat of the trees. Frost flowers melting in thin ice.⦆
2021 リトグラフ、手彩 70×90cm
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⦅天つ日と月影―The sun and the moon⦆
2024 リトグラフ 70×90cm
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⦅少女が抱えた夢―A girl held many dreams in her arms.⦆
2019 リトグラフ 30×20cm
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⦅月魄―Spirit of the moon⦆
2016 リトグラフ 21×16cm
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Artist
山田 彩加|Yamada Ayaka
1985年 愛媛県今治市生まれ
2011-12年 École nationale supérieure des Beaux-Arts de Paris 留学
2014年 東京藝術大学大学院博士課程 美術研究科美術専攻修了
日本版画協会 会員 日本美術家連盟 会員
2015年 南島原市セミナリヨ現代版画展 / 準大賞(渡辺千尋賞)、個展「山田彩加展—命の繋がり」(今治市玉川近代美術館)、東京国際ミニプリント・トリエンナーレ / 大賞
2017年「BLIND PEAK 1 版夢の胎動」(不忍画廊)、相馬俊樹著『BLIND PEAK 叢書 1』(不忍画廊刊)掲載
2019年 第5回バンコク国際版画トリエンナーレ / 買上賞、「アルケミカル・ミューズ」(不忍画廊)
2026年「幻想のパランプセスト 多賀新×山田彩加」(不忍画廊)
収蔵:愛媛県美術館、今治市玉川近代美術館、東京藝術大学大学美術館、国立台湾美術館(台湾)ほか
Art critic
相馬 俊樹|Soma Toshiki
1965年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒。美術評論家。
主な著書:『エロティック・アートと秘教主義』(2018年、エディシオン・トレヴィル)、『アナムネシスの光芒へ—幻景綺論』(2016年、芸術新聞社)、『禁断異系の美術館』シリーズ1~3(2009~2010年、発行:アトリエサード/発売:書苑新社)、『魔淫の迷宮—日本のエロティック・アート作家たち』(2012年、ポット出版)ほか。
編著:「風俗資料館 資料選集」シリーズ=『伊藤晴雨の世界2 伊藤晴雨 秘蔵画集〜門外不出の責め絵とドローイング』(2024年)、『伊藤晴雨の世界1 [秘蔵写真集]責めの美学の研究』(2023年)/「風俗資料館 秘蔵画選集」シリーズ=『秘匿の残酷絵巻[増補新装版]〜臼井静洋・四馬孝・観世一則』(2023年)、『秋吉巒・四条綾 エロスと幻想のユートピア』(2011年)(すべて発行・アトリエサード)
共著書:『病と芸術』(2022年、東信堂、ロメーン・ブルックス論を収録)、『異界の論理』(2011年、アトリエサード、飯沢耕太郎氏との対談集)
訳書:ピーター・ウェブ、ロバート・ショート『死、欲望、人形: 評伝ハンス・ベルメール』(2021年、 国書刊行会)


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